食べものがたり
ツケナとニーナ
越冬に欠かせない伝統的な保存食
手間ひまを惜しまず調理された郷土料理
「ツケナ」とは、野沢菜漬の十日町市での呼び名で、この地を代表する保存食の1つです。各家庭で大量に漬け込み、副食やお茶請けとして冬の間毎日のように食べられます。
冬ごもりの前の寒い日に、冷たい水で手を真っ赤にしながら、刈り取った野沢菜を洗い、樽に塩で漬け込む作業は、晩秋の風物詩です。漬け込んでから半月ほどで食べられますが、年末年始頃にさらにおいしくなり、乳酸発酵が進むとさらに深い味わいへと変化していきます。
「ニーナ」(煮菜)は、ツケナを煮込んで味付けしたお惣菜です。「ツケナ」は発酵が進むと酸味が増してべっ甲色になります。それを水にさらして塩抜きし、出汁で煮込み、※打豆やにんじん、油揚げなどの具材を加え、醤油などで味付けします。早春の定番のおかずで、スーパーのお惣菜コーナーにも並ぶほど地域で親しまれています。ツケナもニーナも各家庭ごとに少しずつ味付けや具材が異なり、それぞれの家ごとの「我が家の味」があります。
保存食は、食材を無駄なく使い切り、一冬飽きずに食べるために様々な工夫が凝らされています。また、大地の恵みをおいしくいただくため手間ひまを惜しまず丁寧に調理されます。素材を生かした素朴な味は、十日町市の郷土料理として今も受け継がれています。
※打豆…ぬるま湯に浸した大豆をつぶして2~3ミリの厚さにのばしたもの。