着ものがたり
越後縮の紡織用具及び関連資料
重要有形民俗文化財
江戸時代の越後を代表する特産品
越後縮の生産に関する貴重な資料
「越後布」は※カラムシの※靭皮〔じんぴ〕繊維を精製した「青苧〔あおそ〕」で作る上質な麻織物です。鎌倉時代以降、朝廷や貴族、武将たちの贈答用として珍重され、室町時代には武家の式服として使用されました。また、戦国時代には上杉氏の度重なる戦の費用を賄う重要な財源として、越後布だけでなく原料の青苧も盛んに生産されました。
越後布は改良が重ねられ、江戸時代になると、緯糸に強い撚〔よ〕りをかけて「シボ」といわれる“しわ”をつけた高級麻織物「越後縮」が生み出されました。シボのついた生地は、肌と布の間に隙間をつくるため風通しがよく、夏の高級衣料として武家はもとより庶民の間にも需要が増大し、十日町を織物の一大産地へと押し上げました。
湿度が高い雪国の冬は、乾燥を嫌う青苧を扱うのに適していました。また、織り上げた布を雪原の上に広げて日光に当て漂白する「雪さらし」は、春の晴天時に雪の残る豪雪地でなくてはできない作業です。越後縮は豪雪地の特性を存分に生かしたブランド品として出荷されていきました。
※カラムシ…イラクサ科の多年生植物。
※靭皮〔じんぴ〕繊維…カラムシなどの植物の茎からとる繊維。
農家の女性たちが懸命に織った越後縮
越後縮は一反を織るのに数か月かかります。雪に閉ざされ外仕事ができない冬の間、女性たちは美しい文様の布をひたすら織り続けました。機織りは農家にとって貴重な収入源で、女性たちは一家の暮らしを支える重責を担っていました。縮を織る腕前は嫁入りの条件のひとつだったと言います。江戸時代、鈴木牧之〔ぼくし〕が雪国の生活を著した『北越雪譜〔ほくえつせっぷ〕』にも、女性たちが縮づくりに励む姿が描かれています。
重要有形民俗文化財に指定された「越後縮の紡織用具及び関連資料」2,098点は、越後縮生産の工程で使用された用具類と製品、生活資料や縮販売のための用具、信仰・儀礼用具などで構成されています。当時の女性たちの心情をうかがわせる家事・育児用具なども収められています。
所在地
十日町市博物館
〒948-0072
新潟県十日町市西本町一丁目448番地9
9:00~17:00 (入館は 16:30 まで)
休館日:毎週月曜日(月曜日が祝・休日の場合は翌平日)、12月28日~1月3日